このページの要点
- 取消事由は包括的な一文ではなく具体的に列挙する。犯罪を理由とするなら、有罪の確定と重大な影響を条件にする。
- 原則は、事実・条項・求める是正を書面で通知し、到達から14日間の是正・説明の機会を設ける。送信だけで到達とみなさない。
- 緊急時は事前の警告を省略できるが、理由の通知と見直しの機会は残す。調査中の暫定停止は期間と見直しの周期を書く。
- 違反の通知の後や停止中の辞退は、取消しと同じ扱いにする。事業者側の事由による取消しなどは年会費を返す。
結論:取消しの「事由」と「手続」を両方書く
認定講師の資格を取り消す場面は、制度の運営で最も緊張する場面です。取り消された人は、名称を掲げて集めた生徒を失い、場合によっては収入の柱を失います。そのため、取消しは後から最も争われやすい処分でもあります。争われたときに事業者を守るのは、「どういう場合に取り消せるのか(事由)」と「どういう順番で取り消すのか(手続)」が、あらかじめ書かれていることです。
認定制度を一から作る依頼者に向けた提案書で、事務所は、受講者向けの規約にあった「当社の信用を毀損する行為を行ったと合理的に判断したとき」という基準を具体化し、①事前の警告、②改善のための相当な期間、③通知の方法を定めることを勧めました。提案書では「手続を整えておくことで、実際に取消しを行った際に『恣意的な取消しだ』と争われるリスクを下げる」と説明しています。手続を書くことは、事業者の手を縛るためではなく、処分を有効に保つための準備です。
このページでは、取消事由の書き方、事前警告と説明の機会、緊急時の例外と暫定停止、処分のあとの年会費の扱い、辞退と再取得の順に解説します。取消し後の名称の扱いは名称・ロゴのガイドライン、違約金は違約金と関係法人のページで扱います。
取消事由は「著しい非行」ではなく、具体的に列挙する
依頼者原案には、「講師になるべき者として相応しくないと判断すべき著しい非行」のような、包括的な一文だけが置かれていることがよくあります。認定講師養成講座のレビューでは、この書き方は判断の基準が不明確で、主観的な運用と評価される余地がある、と指摘しました。
改訂の例 取消事由の書き方
取消事由
「講師になるべき者として相応しくないと判断すべき著しい非行があった場合」に認定を取り消すことができる、という一文でした。
ブランドの信用の毀損、虚偽・誇大な広告、教材の無断提供、受講者の情報の漏えい、刑事事件、反社会的勢力への該当、誹謗中傷などを、8つの号に分けて列挙しました。
ねらい何をすれば取り消されるのかが事前に分かれば、認定講師は行動を選べますし、事業者は処分の理由を条文で説明できます。
事務所が作成した認定講師規約では、取消し等の事由を10の号に分けました。主なものを挙げます。
- 規約又はガイドラインに違反したとき。
- 許諾なく講師を養成し、上位コースを開講し、又は認定を付与したとき。
- 年会費を支払期限までに支払わず、催告の後も支払わないとき。
- 認定の取得・更新・昇格・報告について、重大な虚偽の申告をしたとき。
- 生徒へのハラスメントその他の重大な不適切行為、又は重大な金銭トラブルを生じさせたとき。
- 犯罪行為について有罪が確定し、指導の安全又は制度の信用への重大な影響が認められるとき。
- 反社会的勢力に該当し、又は排除の表明・約束に違反したとき。
- 称号やロゴの重大な不正使用、教材の流出、生成AIへの入力の禁止の違反があったとき。
- 事業者又はメソッドの信用を重大に害する不正な行為をしたとき(正当な意見表明などを除く)。
- 生徒又は事業者との間で重大なトラブルを生じさせ、調査により指導の安全又は制度の信用に重大な影響が認められたとき(逮捕・起訴・有罪の確定を要しない)。
このうち6号は、依頼者の回答にあった「犯罪行為による有罪」を、有罪の確定と、指導の安全又は制度の信用への重大な影響の二つを条件にして絞ったものです。認定の業務と関係のない事案まで一律に取り消さないための提案として、採否の確認を求めました。その一方で10号は、刑事手続を待たずに、事業者自身の調査で重大な影響が認められれば取り消せるようにしたものです。犯罪の有罪を待つ号と、調査で判断する号を分けておくことで、「有罪が確定するまで何もできない」状態も、「疑いだけで取り消す」状態も避けられます。
前提となる資格を失ったときの扱いも、取消事由とは別に書いておくと整理しやすくなります。国家資格者を対象にした技術講習の受講規約では、前提となる国家資格を失ったときや業務停止を受けたときを取消しの事由に挙げたうえで、資格を欠くに至ったときは通知なく当然に失効する、と定めました。処分ではなく、要件の欠落として自動的に効力を失う、という整理です。
原則は「事前警告と14日間の是正・説明の機会」
事由を列挙したら、次は手続です。事務所の認定講師規約では、処分の前に通知と是正・説明の機会を置くことを原則にしました。
- 当社は、原則として、具体的な事実、該当する条項、求める是正及び処分の可能性を電子メールその他の書面で通知し、通知が到達した日から14日間の是正及び説明の機会を設けます。是正されない場合又は説明を確認しても処分が必要な場合は、理由及び効力発生日を通知して、停止又は取消しを行います。
- 停止の通知には、対象となる活動、停止の開始日、期間又は見直しの時期及び解除の条件を示します。当社が電子メールで解除を通知するまで、対象となる指導及び表示を行うことはできません。停止により認定の有効期限が当然に延長されるものではありません。
- 停止、取消し及び違約金に関する催告の効力は、法令に従い通知が到達した時から生じます。送信のみをもって到達とはみなしません。
処分は、違反の内容、程度、反復性及び被害を考慮して、停止、ランクの是正又は取消しから選ぶとしています。
ポイントは三つあります。一つ目は、通知に書く内容を決めていることです。「規約違反がありました」だけでは、本人は何を直せばよいか分かりません。事実・条項・求める是正・処分の可能性を書くことで、是正の機会が実質的なものになります。二つ目は、処分の段階を複数用意していることです。停止、ランクの是正、取消しのように中間の処分がないと、運営は「見逃すか、取り消すか」の二択になり、取り消したときに重すぎると争われやすくなります。協会の会員規約のレビューでも、警告や利用停止などの中間の処分を新設するよう勧めています(協会の会員規約)。三つ目は、到達の基準です。電子メールを送信しただけで到達したとみなす書き方は、意思表示の到達の原則(民法97条1項)と合わず、処分の効力を争われる隙を作ります。
依頼者原案や見本の書式では、「信頼を著しく損ねたと当社が判断した場合には、認定資格を事前の通知なく取り消すことができる」「緊急性があると判断した場合には事前の通知なく」といった書き方をよく見かけます。事前の通知なしの処分を原則のように書くと、手続を経たことを示す材料がなくなります。例外として置くなら、どういう場合に例外になるのかを具体的に書きます。
講師を養成できる上位講師が退任する場面の合意書でも、同じ考え方をとりました。違反があれば、まず中止・削除などの是正を求め、14日以上の期間を定めて催告しても是正されないとき、又は違反が重大で是正が困難なときに限って、認定資格の取消しや使用許諾の撤回ができる、としています(上位講師の退任と引継ぎ)。
緊急時の例外と、事実が固まる前の暫定停止
14日間の是正の機会を原則にすると、「重大な事件が起きたときにも14日待たなければならないのか」という疑問が出ます。事務所の認定講師規約では、犯罪、重大なハラスメント、教材の流出、反社会的勢力への該当など、被害の拡大を防ぐ緊急の必要がある場合や、違反の性質上是正ができない重大な場合は、事前の警告を省略して直ちに停止又は取消しができる、としました。この場合も、理由を通知し、可能な範囲で本人の説明を受け付け、事実の誤りが認められたら処分を見直す、と書いています。手続を省略できるのは「事前の警告」だけで、理由の通知と見直しの機会は残す、という線です。
もう一つ、案の改訂の段階で事務所から提案として加えたのが、事実関係が確定する前の暫定停止です。
暫定停止の設計(事務所の提案)
使える場面
- 要件
- 取消事由に当たると疑うに足りる相当の理由があり、生徒の安全の確保又は信用の保護のために必要があるとき
- 時期
- 有罪の確定その他事実関係の最終的な確定を待たず、調査の間
歯止め
- 通知
- 理由、停止の範囲、調査の見込みを通知し、本人の説明を受け付ける
- 期間
- 調査に必要な最小限の期間とし、原則として30日ごとに継続の要否を見直す
調査の結果
- 認められなかったとき
- 直ちに停止を解除し、事業者側の事由として年会費を扱う
- 認められたとき
- 停止の継続又は取消しへ進む
暫定停止は処分ではなく、調査の間の安全措置です。だからこそ期間の上限と見直しの周期を書いて、事実上の処分にならないようにします。
ご相談と回答 SNSでの問題発言
認定講師がSNSで問題のある発言をしました。すぐに認定を取り消してよいですか。
規約の手続によります。事務所が作成した規約では、原則として具体的な事実と条項を示して14日間の是正・説明の機会を設け、それでも是正されないか、説明を聞いても処分が必要な場合に取り消す、としています。生徒の安全や信用の保護のために急ぐ必要があるなら、調査の間だけ暫定的に停止することはできます。ただし、正当な意見表明や事実に基づく苦情は、信用を傷つけたことだけを理由に処分しない、と規約に書いている点にも注意が要ります。
処分のあとのお金:年会費と受講料
停止や取消しをしたときに、受け取った年会費や受講料をどうするかも、処分の条とセットで決めておきます。事務所の認定講師規約では、次のように分けました。
| 場面 | 年会費の扱い |
|---|---|
| 本人の規約違反による停止・取消し | 支払済みの年会費は返さないことを原則とする(法令上の対応が必要な場合はそれに従う) |
| 本人の辞退 | 同上 |
| 事業者側の事由による停止・取消し・終了 | その認定年度の受領済みの年会費を返す。継続的な停止の場合も、同じ年会費を重ねて返さない |
| 取消しの判断が事実の誤認によると判明した場合 | 事業者側の事由として扱い、年会費を返す |
| 暫定停止の後、事実が認められなかった場合 | 直ちに停止を解除し、事業者側の事由として扱う |
受講料との関係は、受講契約で決めます。国家資格者向けの技術講習の受講規約では、取消しや停止があっても受講料は返さないとしつつ、停止・解除のときの精算の規定は妨げない、と書きました。取消しの条だけを読んで「すべて返さない」と運用すると、受講契約の精算の条と矛盾することがあります。処分によって本人に損害が生じた場合の事業者の責任についても、「一切責任を負わない」と書くのではなく、法令に従う、と書くのが基本です。認定講師が消費者に当たる場面では、事業者の責任の全部を免除する条項は消費者契約法8条1項により無効となり得るからです(有効期間・更新・年会費)。
辞退と再取得:「処分逃れ」を防ぐ
認定講師が自分から辞退する場面も規定しておきます。事務所の認定講師規約では、電子メールで辞退でき、辞退は通知に書いた希望日と事業者が受け取った日の遅い方から効力を生じる、としました。辞退した人が戻りたいときは、失効した人の復帰と同じ扱いです(1年以内は申請と年会費、1年を超えたら学び直しの講座も)。
ここで問題になるのが、違反の通知を受けた後や、停止の期間中に辞退する人です。辞退すれば取消しを免れ、後で失効者と同じ条件で戻れるとすると、処分の意味がなくなります。そこで、違反の通知を受けた後の辞退と停止中の辞退は、「処分逃れ」を防ぐため、取消しを受けた人と同じ扱いにしました。
再取得の扱い(事務所の認定講師規約の例)
辞退した人
- 原則
- 失効後の復帰と同じ。1年以内は申請と年会費、1年超は学び直しの講座の修了も
- 例外
- 違反の通知を受けた後や停止中の辞退は、取消しと同じ扱い
取消しを受けた人
- 原則
- 原因の解消、被害の是正、違反の重大性、再発のおそれを考慮して事業者が判断する。条件を事前に示して同意を得る。再取得は保証しない
- 再取得できない場合
- 無許諾の講師養成、重大な虚偽、ハラスメント等、反社会的勢力、不正使用や教材流出による取消し
年会費の不払いで取り消された人
- 扱い
- 不払いの年会費の支払その他の条件を満たすときに限り申請できる(事務所の提案として採否を確認)
- 理由
- 不払いは他の違反と性質が異なり、解消すれば戻る道を残す
認定が終わったときの生徒への対応も、終了後の措置の条に入れておきます。事務所の認定講師規約では、認定が失効・取消し・終了になったときは、次回の指導予定日までに、生徒に認定の終了と、そのメソッドによる指導を続けられないことを伝え、自分と生徒との契約に従って振替・返金その他の必要な対応をする、としました。認定講師と生徒の契約の当事者は認定講師本人なので、生徒への返金は認定講師が自分の契約に従って行います。事業者が生徒に直接説明する必要が生じた場合に備えて、生徒への案内の文面を事業者が確認できるようにしておく運用も考えられます。表示の修正の期限は名称・ロゴのガイドラインのページで扱います。
再取得できない場合を限定的に列挙したのは、事務所からの提案です。依頼者の回答では再取得の可否は個別判断でしたが、制度の根幹を揺るがす違反は戻れないことを先に示しておくことで、抑止になり、個別判断の負担も減ります。
誰が決め、どう記録し、どう届けるか
処分の手続には、事由と順番のほかに、「誰が決めるか」「どう届けるか」も含まれます。ヒヤリングでは、処分を代表者だけで判断するのか、審査の担当者や委員会を置くのかを必ず確認しています。決める人が決まっていないと、同じような違反に担当者ごとに違う処分をしてしまい、後で「あの人は取り消されなかった」と比べられます。
講座の修了者を会員にして認定名称を使わせる協会の会員規約のレビューでは、除名の手続を、①事由の発生と事実の調査・記録、②軽い違反なら警告や利用停止などの段階的な措置、③期限を定めた弁明の機会、④理事会などの合議体での決定、⑤理由を付した書面による通知と、到達の日に効力を生じること、の流れで規約に書き込むよう勧めました。会員が一般社団法人の「社員」に当たる設計なら、除名には正当な事由と社員総会の特別決議、総会の1週間前までの通知と弁明の機会が法律で求められ(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律30条1項・49条2項1号)、規約で緩めることはできません(協会の会員規約)。
届け方も条文にしておきます。事務所の認定講師規約では、個別の通知は本人が届け出た電子メールその他合意した方法で行い、停止・取消し・違約金に関する催告は通知が到達した時から効力を生じる、送信だけでは到達とみなさない、としました。そのうえで、本人には連絡先を最新に保つ義務を負わせ、通知が返送されたり届かなかったりしたことが分かった場合は、事業者がほかの届出連絡先を使うなどの合理的な対応をする、と書いています。処分の通知が届かなかったことを理由に処分そのものを争われないよう、届け方の手順まで決めておくのが安全です。事実の調査の記録(確認した投稿の画面、日時、やり取り)を残しておくことも、手続の一部として運用のマニュアルに入れておきます。
ヒヤリングの問いと理由 停止・取消しの手続
停止・取消しの事由として想定しているものを教えてください。
依頼者の挙げた事由に、虚偽申告、教材の流出、反社会的勢力への該当などを加え、犯罪については影響の要件で絞る、といった調整をします。
処分の前に、事前の警告、是正期間(何日)、弁明の機会を設けますか。警告なしで取り消す重大な違反は何ですか。誰が判断しますか。
原則と例外を分けて書くためです。判断者を決めておくことも、手続の適正の一部です。
停止・取消しの後に求める措置(表示の停止、SNSや名刺の修正、教材の返還、生徒への告知)と、その期限を教えてください。
終了後の措置の条と、ガイドラインの失効後の表示の条をそろえます。
取消しを受けた人が、もう一度認定を受けることはできますか。
再取得の条件と、戻れない場合を決めます。
取消し・停止のとき、年会費の按分返金はしますか。
本人の違反か事業者側の事由かで分けて書くことを提案しています。
よくあるご質問
認定講師の資格を取り消せるのは、どんな場合ですか?
規約に書いた事由に当たる場合です。「著しい非行」のような包括的な一文ではなく、無許諾の講師養成、名称の不正使用、教材の流出、重大な虚偽申告、ハラスメント、反社会的勢力への該当などを具体的に列挙しておくことをお勧めします。
取り消す前に、本人の言い分を聞く必要がありますか?
規約で手続を定めておくことが大切です。事務所が作成した規約では、原則として事実・条項・求める是正を書面で通知し、到達から14日間の是正・説明の機会を設けています。緊急の場合は事前の警告を省略できますが、理由の通知と見直しの機会は残します。
調査中の認定講師に、活動を止めてもらうことはできますか?
規約に暫定停止の定めを置いておけば可能です。疑うに足りる相当の理由と、生徒の安全や信用の保護のための必要性を要件にし、調査に必要な最小限の期間とし、定期的に継続の要否を見直す、と書いておきます。
処分の前に辞退されたら、どうなりますか?
規約で定めておかないと、辞退で処分を免れられてしまいます。事務所が作成した規約では、違反の通知を受けた後や停止中の辞退は、取消しを受けた人と同じ扱いとし、再取得の条件もそれに合わせています。
取り消した人の年会費は返さなくてよいですか?
本人の違反による取消しなら返さないことを原則にできますが、事業者側の事由による停止・取消し・終了や、取消しが事実の誤認だった場合は、その年度の年会費を返すと定めておくのが公平です。
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本ページは一般的な情報提供です。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた資格スクール・養成講座の受講契約書、講座利用規約、認定講師規約、商標・ブランドガイドライン、協会の会員規約、上位講師の退任合意書、講師業務委託契約書、法人向け講座の規約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)