このページの要点
- 解除に伴う違約金は消費者契約法9条1項1号、単純な違反の違約金は民法420条を出発点に民法90条・消費者契約法10条で検討する。
- 対象の行為を絞り、同じ活動について号・媒体・日数の数だけ重ねて算定しない。超過損害は立証して請求し、違約金を充当する。
- 所属教室や費用を負担した法人には「関係法人」として署名してもらい、約束だけを負ってもらう。容認は「みなす」ではなく「推定」。
- 金額の根拠資料を保管する。違約金を置かず、費目と上限で書く設計もある。
結論:違約金は「対象」「重ね方」「誰に」を決めてから金額を置く
認定講師が無断で講師を養成した、失効した後も称号を使い続けている、教材を複製して売っている。こうした違反に備えて違約金を置きたい、という相談は、養成講座の依頼者からほぼ必ず受けます。違約金は、違反があったときに損害額を証明しなくても一定額を請求できるようにする定めで、抑止の効果もあります。ただし、金額だけを決めて条文に書くと、有効性を争われたり、同じ違反に何重にも請求できるように読めたりします。
事務所が作成した認定講師規約では、違約金の対象となる行為を限定し、重ねて算定しない旨、損害が違約金を超えるときの扱い、ほかの契約との調整、そして所属教室や費用を負担した法人に請求できる場合を、順に条文にしました。このページではその設計を解説します。違約金の前提となる禁止行為は認定講師の活動範囲と教材の使わせ方と生成AI、法人向けの講座の参加者の扱いは企業研修・法人向け講座のページで扱います。
違約金の法的な枠組み:「解除に伴う」ものかどうか
事務所の整理では、違約金はまず二つに分けて考えます。一つは、契約の解除に伴う違約金です。消費者契約法9条1項1号は、消費者契約の解除に伴う損害賠償の予定や違約金のうち、同じ種類の契約の解除で事業者に生じる平均的な損害を超える部分を無効としています。中途解約のときに受講料を返さない定めは、この枠組みで審査されます(養成講座の受講契約)。
もう一つは、録画・複製・無資格での指導のような、単純な契約違反に対する違約金です。こちらは「解除に伴う」ものではないので、消費者契約法9条1項1号ではなく、民法420条(損害賠償額の予定は原則として有効で、違約金は損害賠償額の予定と推定される)を出発点に、公序良俗(民法90条)と、消費者の利益を一方的に害する条項の無効(消費者契約法10条)の枠組みで検討します。金額が実際の損害と比べて著しく過大なら、この二つの規定で無効とされるおそれがあります。
違約金の検討の枠組み
解除に伴う違約金
- 例
- 中途解約のときの受講料の不返還、キャンセル料
- 審査
- 消費者契約法9条1項1号。平均的な損害を超える部分が無効
単純な契約違反の違約金
- 例
- 無断の講師養成、失効後の称号の使用、教材の複製・販売、生成AIへの入力
- 審査
- 民法420条を出発点に、民法90条と消費者契約法10条
認定講師が事業として契約している場面では消費者契約法は及びませんが、これから活動を始める個人や兼業の人は消費者と評価され得ます。
このため事務所の規約の作成時の確認事項では、「契約が消費者契約に当たる場合の不当条項の規制を、個人の講師であることだけを理由に除外しない」と書き、違約金の金額の根拠となる資料(調査・是正に要する費用、教材の流出による損失、使用許諾の対価その他の算定の資料)を保管し、対象の行為との関係を説明できるようにしておくよう依頼者に求めました。受講者向けの規約の違約金についても、基礎講座の受講料と比べて高額になる設定には、公序良俗や消費者契約法10条との関係でリスクがあることを依頼者に伝えています。金額は依頼者が決めるものですが、その金額を説明できる材料をそろえておくことが、有効性を保つ準備になります。
違約金をどこに置くか:認定規程に独立した条を
受講者向けの規約にすでに違約金の条がある場合、認定講師の違反の違約金を、①受講者向けの規約の違約金の条に号を足すか、②認定規程に独立した条を置くか、という選択が生じます。事務所は②を勧めました。認定講師向けのルールを規程の中で完結させ、規程だけを単独で改定できるからです。依頼者の回答も②でした。
そのうえで、認定講師個人への違約金の対象を、次の4つの行為に絞りました。いずれも故意又は過失による場合に限ります。
- 許諾なく講師を養成し、上位コースを開講し、又は認定を付与したとき。
- 失効・取消し・契約終了の後に、称号・ロゴ・現在の認定を示す表示を使い、事業者が具体的に指摘して到達後14日間の是正を求めたのに、正当な理由なく使用を続けたとき。
- 教材を許諾の範囲を超えて複製・配布・販売したとき(失効・停止・終了後を含む。法令上許される利用は除く)。
- 教材を生成AIその他の機械学習モデルに入力し、学習用に提供し、又は類似教材の生成に使ったとき(一般的な事務作業は除く)。
2号に「指摘して14日間の是正を求めても続けたとき」という条件を付けたのは、名刺の修正漏れのような過失だけで違約金が発生しないようにするためです。是正の機会を与えても続けた、という段階で初めて違約金の対象にしています。これら以外の違反については、法令に従って現に生じた損害の賠償を請求できる、と書きました。違約金の対象を広げすぎず、ほかの違反は実損の賠償に委ねる形です。
重ねて算定しない・超過損害・他の契約との調整
違約金の条で次に決めるのは、一つの違反に何回違約金がかかるのかです。同じ規約では、次のように定めました。
- 一連の同一の活動又は公開物に関する違約金の対象行為について、複数の号に該当し、複数の媒体に掲載され、又は日数が経過したことのみを理由として、違約金を重ねて算定しません。
- 当社に生じた損害が違約金の額を超える場合は、当社は、損害及び因果関係を立証して、その超過額を請求できます。既に支払われた違約金は損害賠償額に充当し、違約金に加えて同一損害の全額を二重に請求しません。
- 同一の行為について講座利用規約その他の契約に基づく違約金又は損害賠償も請求できる場合は、既払額を控除し、同一の損害を重複して回収しません。本規約のみを根拠として、乙の所属法人、団体又は生徒に違約金を課すことはできません。ただし、関係法人として署名した法人を除きます。
- 違約金又は賠償金の支払は、禁止行為を許諾するものではなく、停止、削除その他の是正を妨げません。本条は、消費者契約法その他の強行法規又は公序良俗により無効となる範囲において適用しません。違約金の額及び対象は、認定契約の締結前に乙に明示します。
2項の超過損害の書き方は、依頼者との間で調整した部分です。依頼者は当初、「違約金に加えて、超過する損害も請求したい」という希望でしたが、この書き方だと、違約金と損害の全額を足し合わせて請求できるように読めます。そこで受講者向けの規約の側も含めて、「損害が違約金を超えるときは、損害と因果関係を立証して超過額を請求でき、支払済みの違約金は充当する」という形に整理しました。違約金は最低限の額を保証するもので、損害の上乗せではない、という位置づけです。
4項の「違約金の支払は禁止行為の許諾ではない」も大切な一文です。これがないと、「違約金を払えば講師養成を続けてよいのか」という主張を招きます。受講者向けの規約にも同じ趣旨の項を新しく置きました。
所属教室・費用を負担した法人への違約金:「関係法人」という構成
認定は個人に与えるものですが、実際の違反は、認定講師が設立した会社や、所属する教室の名義で行われることがあります。依頼者からは、「受講料を会社が払った人の違反で、その会社にも違約金を請求したい」という相談を受けました。
ここで確認したのは、契約していない法人には違約金を請求できない、という原則です。認定講師が規約に同意したこと、所属先が費用を負担したことだけでは、所属先は規約の当事者にも違約金の債務者にもなりません。そこで事務所は、一定の法人に規約の末尾の欄へ署名してもらい、約束だけを負ってもらう「関係法人」という構成を作りました。
関係法人の範囲(事務所の認定講師規約の例)
必ず署名する法人
- (ア)
- 認定講師が設立し、又は運営する法人・団体
- (イ)
- 認定講師の受講料・年会費その他認定にかかる費用を負担した法人・団体
希望する場合に署名する法人
- (ウ)
- 認定講師が所属する教室・スクールその他の法人・団体
- 時期
- 「○○認定講師在籍」の表示を希望し、事業者がその表示を承諾するとき
関係法人の立場
- 受けないもの
- 認定、使用許諾、称号、認定表示。講師養成や認定付与の権限もない
- 負うもの
- 違約金に関する約束のみ。署名の前にガイドラインの交付を受けて内容を確認する
関係法人への違約金は、個人向けより高い定額とし、対象は、無許諾の講師養成・講座の開講・資格の付与、名称等の無許諾の使用で到達後14日以内に是正しないこと、教材の複製・配布・販売、生成AIへの入力、そして認定講師の違反をさせたこと又は知りながら容認したこと、としました。
最後の「知りながら容認した」をどう立証するかが、この構成の要です。所属先の名義で違反があったときに容認したと扱う方法には、「みなす」と「推定」の二つがあり、事務所は「推定」を選びました。
容認の扱い:みなすか、推定か
「みなす」とした場合
- 効果
- 反証を許さない擬制。関係法人は、知らなかったと証明しても責任を免れない
- 問題
- 法人がまったく知り得なかった違反まで責任を負わせることになり、過大とされるおそれがある
「推定」とした場合(採用)
- 効果
- 関係法人が知らなかったことを立証すれば覆る
- 実効性の確保
- 事業者が違反の具体的内容を通知し、到達後も違反が続いたときは容認したものとする。知らなかったと主張する関係法人には、根拠となる事実の説明、防止のために講じた措置、連絡の記録などの提出を求め、正当な理由なく出さなければ立証したとは扱わない
提出された資料は確認の目的以外に使わず、確認の結果を通知する、とも書いています。
関係法人に違約金を適用しない場合も明記しました。認定講師が関係法人に知らせず、名義や施設も使わずに違反したとき(認定講師本人には個人向けの違約金がかかる)、関係法人が承諾を得てガイドラインどおりに在籍表示をしたとき、認定講師が所属先の教室で認定の範囲内で正規に指導するとき、の三つです。同じ違反に認定講師と関係法人の両方が関わった場合は、それぞれに違約金を請求できるという依頼者の決定を尊重しつつ、二重に予定額を課す点は実損との均衡を問われ得るため、金額の根拠資料を整えておくよう注記しました。受け取った違約金の合計は損害賠償額に充当し、同じ損害を重複して回収しないことも書いています。認定の後に関係法人に当たる法人ができたり変わったりしたときは、届出と加入書の提出を求め、加入書に署名した日から適用し、署名の前の行為には適用しない、としました。
違約金を置かない設計もある
違約金は万能ではありません。違約金を置くと相手方の警戒を招き、契約そのものが結べなくなることもあります。事務所の書類には、あえて違約金を置かない設計もあります。
- 外部講師の直前の辞退:専門職の講師を招くオンラインの講座で、講師の直前の辞退に備えたいという相談がありました。違約金を置く代わりに、期限内(担当講義の3か月前)の辞退は負担なしと明記し、期限後の自己都合の辞退は、代わりの講師の手配の差額・告知の修正費・受講者への通知費・返金額と決済手数料の4つの費目に限り、上限を委託料の2倍とし、代わりの講師を推薦して実施されれば負担なし、としました(講師業務委託契約書)。講師から「厳しい」と言われたときの答えは、期限を緩めることではなく、期限後の効果を費目と上限付きで具体的に書くことでした。
- 上位講師の退任の合意書:依頼者の希望も踏まえて違約金は置かず、違反があれば是正を求め、14日以上の期間を定めて催告しても是正されないときなどに、認定資格の取消しや使用許諾の撤回をする、という形にしました(上位講師の退任と引継ぎ)。
- 外部講師の信用毀損:オンライン講座の主宰者と外部講師の契約では、故意又は重大な過失による信用を傷つける行為(講義中の発言を除く)に限って違約金を置き、同じ機会や同じ意図による一連の行為は一つとみなし、契約終了後の一定期間に限って適用する、としました。法令に基づく申告や公益通報、裁判手続での主張などは、必要な範囲で禁止の対象から外しています。
受講者向けの規約の違約金と、請求するときの手順
違約金は、認定講師向けの規程だけでなく、受講者向けの規約にも置かれることがあります。認定制度を立ち上げた案件の講座利用規約では、教材の複製・公開、受講のためのログイン情報などの共有、認定を受けずに教えること、生成AIへの入力などの違反に、個人と法人の2段階の定額の違約金を置きました。違反によって作られた物(生成AIで作られた物を含む)の削除・公開停止と、入力の履歴や学習データを含む複製物の削除、モデルでの利用の停止を求められる、という項もあります。認定講師規約の側の違約金と同じ行為に両方の違約金が及ぶ場合は、先に見たとおり既払額を控除して重複して回収しないと調整しています。
違約金の条は、置くだけでなく、実際に請求するときの手順も決めておくと運用が安定します。事務所が規約に付けた参考の是正要求通知のひな形では、次の順番を想定しています。
違約金の請求に至るまでの手順(参考ひな形から)
- 適用される契約の確認相手方が実際に同意した規定(認定講師規約か受講者向けの規約か)と同意日を確かめる
- 是正の求め確認した行為・掲載先・確認日と保存した資料・該当する条項を示し、到達から14日以内の回答と是正を求める
- 説明の確認事実の相違や許諾がある場合は、その内容と資料を出してもらい、確認したうえで判断する
- 再通知応答がなければ、前回の通知と到達の記録を特定して、期限を示して再度求める
- 違約金の請求具体的な違反の事実、同意済みの根拠条項、請求額、ほかの請求との調整を別に明示する
二つの規約の違約金を同じ損害について重ねて請求しないこと、係争になった案件は必要な対応を個別に検討することも、ひな形の注意書きに入れました。
最初の通知でいきなり違約金を請求しないのは、相手方が事業者から個別に許諾を受けていたり、事実の認識に誤りがあったりする可能性があるからです。違約金の請求は、是正を求めても応じない、という段階で、根拠と金額をそろえて行います。違約金の額と対象は、認定の契約を結ぶ前に本人に(関係法人には、その署名の前に法人にも)明示する、と規約に書いたのも、請求の段階で「聞いていない」と言われないためです。
ヒヤリングの問いと理由 違約金
認定修了者向けの違約金は、受講者向けの規約の違約金の条に号を足しますか、認定規程に独立した条を置きますか。
事務所は認定規程に置くことを推奨しています。規程だけを改定できるからです。
違約金の金額、対象となる行為、損害が違約金を超える場合に超過分を請求する扱いでよいかを教えてください。
対象を絞り、超過損害の書き方を「加算」ではなく「超過分の請求と充当」に整えます。
準拠法と管轄は、受講者向けの規約と同じでよいですか。海外に住む認定講師がいる場合は別の扱いを望みますか。
海外在住者にも同じ定めを適用しつつ、消費者保護の強行法規などが適用される範囲ではそれに従う、と書くかを決めます。
警告文の差出人の名義、送り方(メール・書面)、回答の期限、警告の強さ(是正の要求にとどめるか、法的措置の予告を含めるか)の希望を教えてください。
契約の相手方向けと第三者向けの二つのひな形を作るためです。
ご相談と回答 違約金
違約金はいくらまでなら有効ですか。
一律の上限はありません。解除に伴う違約金なら平均的な損害を超える部分が無効になり(消費者契約法9条1項1号)、単純な契約違反の違約金なら、実際の損害と比べて著しく過大な場合に公序良俗や消費者契約法10条で無効とされるおそれがあります。対象の行為を絞り、重ねて算定しないと書き、金額の根拠資料を保管しておくことをお勧めしています。
受講料を会社が払った認定講師が違反したら、会社にも違約金を請求できますか。
会社が規約に署名していなければ、原則として請求できません。事務所が作成した規約では、費用を負担した法人などに「関係法人」として署名してもらい、違反をさせた・知りながら容認した場合に違約金を負う構成にしました。容認は「みなす」ではなく、反証できる「推定」にしています。
よくあるご質問
講座や認定制度の違約金は、いくらまで有効ですか?
一律の上限はありません。中途解約に伴う違約金は平均的な損害を超える部分が無効とされ(消費者契約法9条1項1号)、無断の講師養成や教材の複製などの違反の違約金は、実際の損害と比べて著しく過大なら公序良俗や消費者契約法10条で無効とされるおそれがあります。金額の根拠資料を保管しておきます。
違約金は受講者向けの規約に書けばよいですか?
認定講師の違反の違約金は、認定規程に独立した条として置くことをお勧めしています。認定講師向けのルールを規程の中で完結させ、規程だけを改定できるからです。ほかの契約の違約金とは、既払額を控除して重複回収しないと調整の条を置きます。
違約金を払えば、無断の講師養成を続けてもよいことになりますか?
なりません。違約金の支払は禁止行為を許諾するものではなく、停止や削除などの是正を妨げない、と規約に明記しておくことが大切です。
所属教室にも違約金を負わせることはできますか?
所属教室が規約に署名していれば可能です。事務所が作成した規約では、在籍表示を希望する教室に「関係法人」として署名してもらい、違反をさせた・知りながら容認した場合に違約金を負う構成にしました。教室が知らずに違反があった場合は適用しません。
違約金を置かずに、違反を抑える方法はありますか?
あります。講師の直前の辞退なら、負担する費目と上限を具体的に書き、代わりの講師を推薦すれば負担なしとする方法があります。退任の合意書のように、是正の催告と資格の取消しで対応する設計もあります。
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本ページは一般的な情報提供です。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた資格スクール・養成講座の受講契約書、講座利用規約、認定講師規約、商標・ブランドガイドライン、協会の会員規約、上位講師の退任合意書、講師業務委託契約書、法人向け講座の規約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)